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【LabVIEWユーザ紹介】東京工業大学 一杉太郎先生、小林様

こんにちは、NIの尾崎です。

 

初めてLabVIEW CaféでNIユーザさんのご紹介をさせていただいてから、もう半年以上経ってしまいました。
環境の変化も多い中、皆様どうお過ごしですか?

 

 

NI社員も殆どが在宅ワークとなっております。
お客様へ直接お伺いするのもなかなか難しい状況ではありますが、物理的には離れていながらも、
電話会議では以前よりもお客様との心の距離が近くなっているような気がして嬉しい気持ちでもあります。

 

このような状況下ですので、現場や実験環境に行くことも以前と比較すると難しくなっておられる方も多いのではないでしょうか。

 

 

今回は、新型コロナにも負けずに研究を進められている、東京工業大学の一杉 太郎(ひとすぎ たろう)先生と、
小林成さん(博士課程2年生)のご紹介をさせていただきたいと思います。

  

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一杉・清水研究室では、固体材料の研究をされているのですが、そこで使われている実験設備がとてもユニークで、
是非NIのお客様にも知っていただきたい!と思い、一杉研究室の次世代研究室、「デジタルラボ」について
LabVIEW Cafeでご紹介させていただけることになりました。

 

一杉太郎先生と小林成さん(博士課程2年生)、貴重なお時間をありがとうございました。

 

 

デジタルラボ… 色々自動化されている研究室?というざっくりしたイメージで研究室にお伺いしたのですが、
背景をお伺いし、実物を見せていただくと、熱い想いを感じることができました。
この記事を読んでくださった方にも、デジタル化をスタートするきっかけの1つになれば嬉しいです。

 

まずは、一杉・清水研究室のデジタル化への背景について。

一杉研究室での研究分野である固体材料。

日本では固体を扱う産業(素材や化学、エレクトロニクス、自動車産業等)が強く、新しい材料探しが重要とのこと。

まだまだ発見されていない高機能な材料が眠っているそうです。
これからもまだまだ成長しつづける材料分野は、とても夢のある分野。

 

液体材料は物が扱いやすく、一度に幾つものサンプルを扱うことが出来るので、自動化も行いやすく以前より進んでいるのに対し、
固体材料分野では、単純な作業も人間が手をうごかして実験を行っている場面が多く、自動化はまだまだこれから。

 

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※許可をいただき、一杉先生のスライドを引用させていただいております。

 

最近は 産業用ロボットの技術が高くなってきたことや、値段が安くなってきたこともあり、先生も2014年頃から

実験室のデジタルラボラトリ化に取り組まれておられます。

 

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※許可をいただき、一杉先生のスライドを引用させていただいております。

 

目指すのは 単なる自動化されたラボではなく、ロボット、AI、研究者 のそれぞれが「協働」するラボ。
それぞれの得意なところを分担し、実験全体の効率化を図ることが出来ます。

ロボットは人間が手作業で出来ること/出来ないことも、より正確にミスなく高速に行うことができます。
休憩も不要なので、24時間、昼も夜も働き詰めでも問題ありません。
具体的には、人間の手作業だと2ヶ月もかかるところ、ロボットが行うと実験サンプルを多くしても6日ほどで作業終了。

かつ、ミスなく、人の手作業による誤差もなく実験結果を得ることができます。

 

より多くのパターンをテストすることができ、人が予想していなかった結果の発見に繋がります。

AI技術を取り入れることにより、得た結果から最適解を導いてくれもします。

 

これにより研究者に新しい時間が生まれます。
研究者には時間ができるので、暇になるのか…と思えば、考えることが出来る時間が増える為、より忙しくなるそうです。
人間が得意な”考える”ということに、貴重な時間を使うことができるようになります。

 

「創造性を発揮できる環境へ。」浮いた時間をよりクリエイティブなことに時間投資をする。
デジタルラボラトリの導入により、これまでの研究のやり方を根本から変えることができ、より革新的な研究を行うことが可能になります。

 

すでに取り組まれておられますが、今後はどのような条件でどのような材料ができるのか、データベースに情報を蓄積し、

大学側、企業側とも一緒に総合的に材料分野の技術の底上げができたらとのこと。
これこそ、ロボットが同じ条件で作業を行えるからこそなし得ることですね。

 

以下は実際に尾崎が見せてもらった研究室の様子:

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固体材料を作る上で必要となる成膜~評価までのプロセスを、真空状態にされているこのヘキサ構造のようなクラスターシステムで行えます。
それぞれの部屋(真空チャンバー)の中で異なるプロセスを行えるようになっていました。

 

この構造それ自体や、それぞれの工程の自動化をどのように行うのか、何もないところから考えられて実装までされています。

 

唯一無二のアイディアが詰まったとてもユニークなシステム。

 

こちらのシステムは2号機として構築されたシステムで、以前に構築された半自動化のシステムも見せていただきました。
成膜から評価までが可能な半自動のシステムに、更にアイディアを追加されて行かれたものなのですね。


NI製品ですが、クラスターシステムの制御用にCompactDAQシステムが使われており、ソフトウェアプラットフォームにLabVIEWが使われています。
固体材料の成膜プロセスなどにおいて必要となる実験系などもLabVIEWから制御されています。

 

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LabVIEWの魅力の1つであるオープンプラットフォームが存分に活かされておりました。

 

LabVIEWをプラットフォームとしていただくことで、学生様が必要に応じてシステムをより強化に作り込まれておられます。
※ 補足情報:基本的なシステム構築はNIのアライアンス・パートナーである、テクトスの近藤様が構築されており、

これを 博士課程2年生の小林様が編集されて使われています。

 

今後はこちらのシステムを更に最適化されるのに加え、AIなどの学習機能を持たせることで、

逆に研究者にアイディアを提供できるような、デジタルラボのさらなる進化に取り組まれております。
まさにAI、ロボットとの協業が実現されている実験室です。

 

システム構築を行っておられる小林様からも色々とお話しをお伺いしました。
小林様は応用化学専攻ということで、大学の講義などでは機械学習やプログラミングを学ぶ機会は無かったそうですが、
一杉・清水研究室に入り、そこからプログラミングや機械学習を学んでいかれたそうです。
私も大学時代はプログラム経験ほぼゼロでしたので、研究室に入られてからプログラミングを学び、
LabVIEWやPythonなどでシステム実装をされているとお伺いして、色々な方面に努力されて柔軟に吸収されてきたことがわかりました。

 

応用化学専攻であると同時に、プログラミングや機械学習の知識もお持ちなので、視野も広く持たれているのだと思います。
このような経験を得ることができる一杉・清水研は学生様にとって本当に学びの多い環境ですね。
小林様には今後も知見の幅を広げていただき、色々な方に影響を与えて欲しいです。

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デジタルラボのアイディアを数年前から考え、このような形で実践されている。
アイディアだけでも素晴らしいのですが、そのアイディアをアウトプットし、このように形にされるまでには、
想像を超える労力がかかっただろうと思います。

 

一杉先生がデジタル化を取り入れられた背景で、他の研究分野に携わられたことを1つのキッカケとして挙げられていました。

 

教育、研究現場は縦割り構造になっているので、中々他の領域について知る機会が少ないことを指摘されていました。
とある研究分野だと可能なことでも、別の分野では中々知見がなく思いつかないことがある。
今後、より研究の発展をさせていくためには、それぞれの分野の研究者や科学者が顔をつき合わせて意見を出し合い、進めていくべき。

そうすると、いろいろなアイディアが湧き、わくわくする。
そして、このわくわくした姿を若い世代が見ることで、ますます研究の世界も進歩する。そんな世界をつくりたいと思っている。
と話してくださりました。

 

ご自身の研究に留まらず、日本の材料科学分野における発展を目指され、情報発信から相談の受け入れまでと幅広く活動されています。
私も、アカデミック担当として、より一層お手伝いができたらと思います。

 

一杉・清水研究室では既に企業との連携なども進められており、博士課程2年の小林様も企業との共同研究には非常に多くの学びがあったそうです。
研究室は、ご興味があれば、いつでも見学も可能とのことです。

 

以下2本のYoutube動画にて、構想を聞いたり、動画で実験装置の動作を見ることもできます。

#26 一杉太郎「まだ見ぬ災厄に向け、研究の進め方に変革を」× 鈴木悠太 Tokyo Tech DLab "STAY HOME, STAY GEEK" 研究者インタビュー

AI、ロボット、研究者が協働するデジタルラボラトリ

 

 

固体材料の研究をされている方はもちろん、他の研究をされている方々も、一杉研究室のように
ロボットと協業をすることで、現状では実現できない発見の加速をすることができると思います。

 

もちろん、中にはデジタル化が当てはまらない方もいらっしゃると思います。
それぞれの研究室の最適な形は、現場で研究をされている方が一番良く理解されていると思います。

 

デジタル化することで、研究成果や開発結果などがよりよい方向に進みそうでしょうか?
単純に時間短縮ができるだけではなく、新しい結果にも繋がる話かと思います。

 

現在は様々なところで遠隔化などの話も上がっているかと思いますので、まずは小さいところからでも、
カスタマイズ性の高いNIのハードウェアと、LabVIEWという他社製品とも接続性の高いオープンな開発環境で
デジタル化をしてみませんか?

 

一杉・清水研究室ではかなり複雑なプロセスを自動化されておられますが、シンプルな工程からであればスタートもしやすいかと思います。

 

以前尾崎がLabVIEW Cafeでご紹介したSystemLinkなども使い、遠隔監視のご提案をさせていただくことも出来ますので、
まずは是非、周りの環境の自動化を想像してみてください!

 

 

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