02-20-2020 06:01 PM - 最終編集日: 11-20-2024 03:56 PM 、編集者: Content Cleaner
2020年,東京オリンピックも開催される本年は大きな「節目の年」になりそうです。
前回の東京オリンピックが行われた1964年は,東京-大阪間に新幹線が開通されるなど,振り返ればテクノロジー分野でも大きく進展があった年でした。
本年はどのような進展がありそうかと考えると,「電気自動車(EV)」のさらなる台頭が起こると予測しています(ニヤリ)。
昨年行われた東京モーターショーでも今年市場へと登場予定のEVが多く紹介されるなど,自動車メーカーから様々な種類のEVが出揃うことが期待されています。
都市型の小型モデルから,長距離走行が可能なトラックまで・・・EVが一気に一般的な乗り物へと変化する「節目の年」だと言えそうです!
さてここから普及が期待されるEVについて少し技術的な話に入ります。
次世代のEVのさらなる普及のためには,より小型で低コストな電動システムであることがマストな条件でしょう。その中でインバータシステムの小型・低コスト・高効率化は重要な課題の一つとなっており,現在はシリコン(Si)素材のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)というパワー半導体が多く用いられています。
EVの普及に際して,このパワー半導体もこの数年で大きく様変わりしていくと予想されています。
そこで今回は,
• パワー半導体のトレンド
• パワー半導体に求められる要件
• NIが提供できるソリューション
についてご紹介させていただきます。
<パワー半導体とは?>
まずは「パワー半導体とは何ぞや?」という方のために簡単に役割を説明します。
パワー半導体は,モータなどの制御や電力の変換を行う半導体です。
電力の制御や供給を行うことで,パソコンやエアコンなどの各機器に電源から最適な形で電力を供給することができるようになります。
下図のようなパソコンの例で確認してみましょう。
電源から供給される100 Vの交流をパワー半導体を用いて整流・電圧降下を行うことにより,内部の部品であるマイコンやメモリに適した形に変換を行うことができます。
<パワー半導体の使用例>
電子機器に含まれる電源回路はパワー半導体を組み込んでいます。EVに限らずスマートフォンやスマートスピーカなど今後さらに電源回路の搭載台数を伸ばしていくと考えられる電子機器にとっても,パワー半導体はなくてはならない存在であることは間違いないでしょう。
パワー半導体の応用分野としては5 V以下程度の低い電圧のものから,ハイブリッドカーのようなものでは200~600 Vといった高い電圧のものなど幅広い電圧レンジのものがあります。
パワー半導体の代表例としては,IGBTやMOSFETが挙げられます。その構造からそれぞれ得意分野が異なり,特にIGBTは比較的大電流を扱う際に優れています。
<パワー半導体のトレンド>
自動車分野,家庭用家電等が市場をけん引する形でパワー半導体の市場はこれから大幅に増加することが見込まれています。特に自動車関連分野においては自動車のEV化,自動運転技術の進展により需要増加が起きると予測されています。
特に炭化ケイ素(SiC)などの素材を用いた次世代のパワー半導体は今後さらに市場の成長が進む分野として注目されており,2030年には2017年と比較して1200%以上成長すると予測されています。
<パワー半導体の市場予測(※1)>
次世代および次々世代のパワー半導体の成長が予測されている理由としては次のセクションで紹介するパワー半導体に求められる要件に関して大きく向上すること寄与するからです。
例として比較的大電流にも対応が可能なSiCデバイスが役立つ場面を考えると,パワー半導体をハイブリッド車や電気自動車で使用することを想定した際に,現状のシリコン(Si)素材から作るものに比べてSiC素材のパワー半導体の方がコンバータ,インバータなどを小さくし,効率を大きく高められることが期待されています。
<パワー半導体に求められる要件とこれからのテスト要件>
さて上記で説明した新素材のパワー半導体ですが,小さく作ることができるという場所的な効率だけではなく機能的な面でも大きな効率向上があると考えられています。
パワー半導体では一般的に低オン抵抗,高速スイッチ,高破壊耐量の特性を同時に向上することが求められています。
パワー半導体のテストにおいては上記の特性をしっかりと計測できることはもちろんのことですが,同時にビジネス的な側面からこれから求められるテストについて考えてみましょう。
パワー半導体に限らず半導体業界,ひいては製造業においては「Time to market(=市場に出るまでの時間)」を意識してどれだけ素早くリリースできるかがビジネスを成功させる上で非常に重要です。すなわち市場に最初に参入した人が優位となります。
パワー半導体のテストにおいてTime to marketを考えた場合,開発から量産までの期間短縮が市場投入までの時間短縮のために求められてきます。
そこで開発と量産それぞれにおいて独自のテストシステムを設けるのではなく,両者において一貫したテストシステムを設けることにより,開発と量産でのデータの相関をとることは簡単にでき,スムーズに量産へと移行できるといったメリットがあります。
下記で紹介する弊社のソリューションとしてはそのような開発から量産まで一貫したテストシステムを設けて上市時間を短縮することが可能です。
<NIが提供できるソリューション>
NIにおいては,信頼性要求が非常に高い半導体業界でもシェアを拡大しており,生産工程で必要なタクトタイム,ソフト・ハード含めた調達の一本化についても価値を認められています。NIのPXIプラットフォームと自由度の高いテストシーケンスを構築できるLabVIEWといったソフトウェアを導入することにより,より拡張性・保全性能の高い自動テストシステムを構築することが可能です。
PXIを用いた拡張性・保全性能の高い自動テストシステムについてはぜひ下記の記事もご参考にしてください。
【PXI】複雑化を遂げる世界のICトレンドにPXIシステムで立ち向かう! - NI Community
https://forums.ni.com/t5/LabVIEW-Caf%C3%A9/PXI-%E8%A4%87%E9%9B%91%E5%8C%96%E3%82%92%E9%81%82%E3%81%9...
パワー半導体テストの例を挙げると,下記のような要望に対して対応する小型のモジュールを使用することによりニーズに合った自動テストシステムを構築することができます!一般的な箱型計測器と比較し,測定項目が変化,また項目数そのものが増加した場合でもモジュール追加、あるいはソフトウェア編集により試験内容をフレキシブルに変更することができるため,新しい検査規格にも柔軟に対応できるだけではなく,必要最低限の構成とすることでフットプリントの削減にも貢献できます。
・ゲート駆動電圧を変更する(PXIe-6378)
・その際のゲート電圧・電流を高速に同期して測定し,波形を観察する(PXIe-5111)
・また追加で温度の計測も同時に行う(PXIe-4353)
<PXIシステム構成の例>
特に上記のテストにおいてゲート電圧・電流を高速で測定することが重要な項目かと思います。オシロスコープモジュールで(PXIe-5111等)を用いると,最大サンプリングレート3 GS/sのスペックで計測が可能であり,高速スイッチング化が進むパワー半導体の特性についてGS/sオーダーの同期計測をPXIプラットフォームで実現することができます。
もちろん複数モジュール使用による多チャンネル数化など評価から,タクトタイムを要求される生産工程まで対応が可能です。
PXIe-5111 - National Instruments
https://www.ni.com/ja-jp/support/model.pxie-5111.html
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今回のパワー半導体に関するご紹介は以上になります。
PXIのシステムについて,さらにご興味持っていただけた場合下記の記事などもご覧いただければ幸いです。また実際に弊社のシステムを導入することにより半導体のテストにおいてコスト削減を実現した例も下記でご紹介しておりますので,ぜひご一読ください。
弊社ではPXIに限らず様々なソリューションを提供しておりますので,解決されたい課題などあればぜひお気軽にご相談ください。
エレクトロニクス機能テスト - National Instruments
https://www.ni.com/ja/solutions/electronics/automated-electronics-test.html
<参考文献>
※1 低消費電力・高効率化の実現に向け量産化の動きが本格化している次世代パワー半導体の世界市場を調査 | プレスリリース | 富士経済グループ
https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=18023&view_type=1
この記事を書いた人
米田 実紀
大阪生まれ,兵庫育ち,京都へ進学した生粋の関西人。
日本ナショナルインスツルメンツ(NI)にて,Technical Support Engineerとして幅広い業界のお客様への技術サポートやNIのソフトウェアトレーニング講師などを担当。
新しいもの好きで,昨日までなかった新しい技術の誕生を後押しするためにNIに入社。
現在の興味分野:機械学習,アグリテック,サッカー