09-08-2019 10:10 PM - 最終編集日: 12-02-2024 12:08 PM 、編集者: Content Cleaner
車載Ethernetと今後の動向
弊社NIでは「Future Proof」を合言葉に製品展開をすすめています。
これは最先端の開発に関わることの多い計測業界では5G,AIなどの新しい技術を見据えて長く利用できる、拡張性のあるシステムを構築できるようにする
試みになります。慣れたら早い、慣れるまでも早いソフトウェア環境であるLabVIEW (手前どもの味噌ではありません・・)をコアにし
多様な技術トレンド柔軟に対応できるハードをリリースしております。
近年コネクテッドカーという単語を聞いたことがあるのではないでしょうか。
自動車衝突事故に遭遇した人に、どの場所でも素早い援助が行えるeCallなども有名です。
このようにネットワークを介して通信する機能をもち、情報を集積、分析させることができるような自動車を広義でコネクテッドカーと呼びます。
例えば既にファームウェア更新を遠隔で行ってしまうOver-The-Air技術はテスラモーターズが実用化しています。
コネクテッドカーは以前の自動車と違い、外部ネットワークに繋がる必要があるため、従来のCANやLIN中心のプロトコルから
外部ネットワーク側のプロトコルにどこかで変換してあげる必要があります。それならば最初から車内の通信をEthernetにしておけば非常に便利ですよね。これを裏から支えているのが車載Ethernetになります。
車載ネットワークとは?
まず車載ネットワークの話から少ししたいと思います。
その昔、自動車のエンジンがECUで制御され始めたのを皮切りに、車のあらゆる部分がECUによって制御されてきました。
ECU同士のデータのやり取りを行うために必要だったのが車載ネットワークです。
現代の車は多くて150個程度のECUが搭載されています。電動化・ハイブリッド化が進むにつれ当然ながら自動車のシステムとしての複雑さは増していきます。
今最も普及している車載ネットワークはご存知CANです。他にもLIN、FlexRay、J1939など、普段聞き慣れているものも多く使用されています。
なぜ車載Ethernetが必要なのか?
名前の通り、車載Ethernetとは車内のデータのやり取りを行うためのEthernetになります。
現代の自動車は昔の自動車とは違い、予防安全や自動運転のために、あらゆるところにセンサーがあり、エンジン以外にもステアリングなどの制御するものも増え、HMIやカーナビなどの情報を表示させるためのインタフェースも増えています。しかし、データ量が増えるにつれ当然ながら必要な帯域も増えてしまいます。この問題の解決策となるのが車載Ethernetになります。
さらに、他にも利点がかなりあり、期待が集まっている技術です。
・高速
言わずもがなですが、CANなどに比べて高速です。
・クラウドへ接続する際の変換の必要なし
既存のCAN中心のシステムから外部ネットワークに接続する場合はゲートウェイを介して変換を行うという余分な
ステップが必要でしたが、車載Ethernetではこの変換が必要ありません。
・ケーブル削減
現状はCAN、LIN、FlexRayなどが混在して使われていますが、これを統一することで変換機器の必要が無くなると
ともに、必要なケーブルの量も減ります。
・コスト削減
実はケーブルはエンジン、シャーシについで3番目に高価な構成部品となります。
ケーブル削減で80%までのコスト削減が見込めます。
・重量削減
さらに、ケーブルはエンジン、シャーシについで3番目に重い構成部品です。ケーブル削減で30~50%ほどの重量
削減が期待されます。重量は燃費に直結するので低燃費化にも貢献します。
引用:Wire troubleshooting and diagnosis: Review and perspectives(2013)
どこが普及させようとしているのか
自動車産業の動向は標準規格や規制によって決められます。
世界的に見るとIEEEと自動車産業が一体となって車載Ethernetの標準化を進めており、日本ではJASPARが車載Ethernetに必要な要件をまとめ、標準化団体へ提案して世界標準を創出しようとしています。
車載Ethernet市場は2023年までに年平均成長率41.1%を見込んでいます。普及への鍵となる企業は主に半導体メーカーで
Broadcom、Marvell、Microchip Technology、NXP Semiconductors、TE Connectivity、Infineon Technologies、Realtek Semiconductor、東芝などになります。
(上記のメーカのテストシステムとしても実はLabVIEWとPXIが使用されています。)
NIの動向
こうした動きを受けてNIでは、ECUテストを念頭に車載イーサネット対応のモジュールを販売しております。
(写真はPXIe対応モジュールになります。)
弊社製品を選ぶメリットはLabVIEWユーザー様にとってはすでに使い慣れたLabVIEWを用いて車載イーサネットの関わるシステムをデザインできる点に尽きるかと思います。
他社様はどちらかといえばネットワーク設計に特化しており、車載Ethernet単体での試験を得意とされています。
ただし、どうしても複数の入出力(アナログ、デジタル、無線、カメラ等々の入出力)
が必要な場合やそれぞれの協調、制御が必要な自動試験に対応することが難しい、あるいは費用的に高額になります。
例えば自動運転の開発では実に様々なバスやプロトコルを用意し、巧みに協調制御する必要がありますが、そうしたトレンドが後押ししてくれそうです。
次回のトレンド記事は同期計測をシンプルにする、「TSN」という技術にフォーカスしようと思います。技術概要とメリット、また弊社は何をしているのか解説いたします。また別トレンドとして「IoT」にフォーカスし、弊社のソフトウェア紹介、IoTと多数の実績をお持ちのパートナー様の御紹介もいたしますので、お楽しみに。
この記事を書いた人
阿部 敏朗
熊本県熊本市生まれ。茨城育ち。
日本ナショナルインスツルメンツ(NI)にて九州、中四国地方を担当。
LabVIEWや製品が日に日に新しくなるので日々勉強しつつ活動しています。
趣味は毎日の食事、AI関連の記事をよむこと、温泉、ロングウォーキング。
ご相談・お問い合わせなどありましたら、こちらよりお気軽にお問い合わせください。